
こんにちは、専門学校教員で
理学療法士のダイ吉です!
本日のテーマは臨床推論です。
新人PTや学生さんにとって、「聞いたことはあるけど、正直よく分からない」そんな言葉かもしれませんね。

え~、なんか難しそう。

うん、かなり複雑だよ…。
臨床推論は、知識を覚えただけでは身につきません。経験やディスカッションを通して少しずつ鍛えていくものです。
臨床では先輩や指導者から、
「なぜそう考えたの?」
「次はどうするつもり?」
と聞かれる場面が多くあります。
その追及に対応できるよう、リハビリにおける臨床推論のトレーニング方法として、SOAPを使った思考の整理術を紹介します。
臨床推論とは?なぜトレーニングが必要なのか
臨床推論とは、知識を並べることや、正解を当てることではありません。
評価で得られた情報をもとに「なぜ起きているのか」「次に何をすべきか」を考え、判断につなげる思考の流れです。

現場には教科書通りの答えはなく、考え方も指導者や施設によって異なります。だから臨床推論にはトレーニングが必要です。

大切なのは、判断に至る
までの考え方を整理し、
説明できることだよ。
臨床推論がうまくいかない理由
臨床推論がうまくいかない一番の理由は、答えを出そうとしてしまうことです。
評価結果を、どうつなげればよいのか?この型が確立されていないため、どこかで思考が止まってしまうんですね。

臨床推論は、知識量の問題ではありません。
どの情報から、何を判断したのかをまとめることです。よって、思考を整理する練習をしていないことが、つまずきの正体です。

でもさ、指導者によって
違うって言ってたじゃん。

うん、だから皆が知っている
SOAPを使うんだよ。
思考の整理としてSOAPを使う
SOAPはカルテ記録の型ですが、考えたことを整理する道具としても使えます。
S:主観的データ
対象者の意見も聞いてみてね
O:客観的データ
判断を裏付けるデータはここだよ
A:考察・アセスメント
メリット・デメリットを伝えるよ
P:計画・プラン
これをやるって決まったよ
SOAPは、「なぜそう判断したか」までの思考過程を言語化するのに向いていますが、ちょっと見づらいのが難点です。
そのため、SOAPを少し変化させて、臨床推論を鍛えるための思考整理ツールとして有効に使っていきます。
臨床推論トレーニング|PAOSで考える
臨床推論で思考を整理するには、考える順番がとても重要です。もし、SOAPのように主観的データから入ると、必ず途中で止まります。
そこで、順番を逆にしてPAOSで考えてみて下さい。
まず、(P)この患者さんに何をしたいと考えたのか。次に(A)なぜその判断をしたのか、(O)その根拠となる 客観的なデータ、最後に(S)本人の訴えで整理します。

では、例を2つ挙げるよ。
トレーニング|先輩PTに説明する場面
ある患者さんのリハプログラムについて、先輩PTと新人PTのやりとりです。

Aさんの歩行訓練って
今後どうするつもりなの?

はい、しばらくこのままで
継続するつもりです。

そっか、なんで続けるの?

訓練を続けたことで、速度と
耐久性が向上したからです。

う~ん、それを裏付ける
データは何かあるのかな?

先週は300m歩行に8分掛かり
終了後の血圧は 145/92 で
Borgスケールは14でした。

うん、そうだったね。

今週は、6分30秒で歩けて
終了後の血圧は132/88。
Borgスケールは12でした。

ほう、それはすごいね。
患者さんは何て言っているの?

最初は辛かったけど、体力が
ついたって喜んでました。

そっか分かった。
じゃぁ、続けて様子をみよう。
とくに先輩から突っ込まれることなく、臨床推論を言語化して伝えることができました。
では、PAOSで説明できたので、SOAPに変換しながらカルテに記載していきましょう。
【リハビリ記録】
S:徐々に体力がついてきた
O:300mの歩行データ
| 時間 | 血圧 | Borg | |
| 先週 | 8分 | 145/92 | 14 |
| 今週 | 6分半 | 132/88 | 12 |
A:リハビリの歩行訓練が歩行速度と耐久性向上につながっている
P:歩行訓練の継続
会話の内容は濃くても、SOAPにまとめれば、たったこれだけで終了します。
さらに、先輩PTからの質問にも、根拠を持って答えることができました。
トレーニング|装具を導入するかの判断
次は、患者さんとのやり取りから、臨床推論をまとめる例を紹介します。
今回は、先にカルテ記録から!
【リハビリ記録】
S:着けていると安心感がある。是非、退院後も使いたい。
O:アンクルソフト装着での歩行
[歩行観察]ICでは踵接地となりLRでのヒールロッカーが出現、反対側の遊脚期での振り出しが大きくなっている
A:足関節の固定性を補助することは歩幅の拡大につながり、歩行パフォーマンスが向上していると考えられる
P:下肢装具の購入を進める
それでは、評価場面を見てみましょう。

それでは、今日は足に装具を
付けて歩いてみましょうか。

この前言ってたやつだね。
よし、やってみよう!
【装着して歩行を観察】

お、こりゃ良さそうだ!

歩いてみてどうですか?
使いやすそうでしたが…。

こりゃいい、安心して歩ける。
退院後もぜひ使いたいな!

そうですか、分かりました。
患者さんの感想と歩行分析により、下肢装具を購入する方向性が決まりました。
今後の方針は?
P:下肢装具の導入が決定
なんで導入するの?
A:足関節の固定性が向上するから
その根拠は?
O:ヒールロッカーが出現した
本人はどんな反応だった?
S:本人も気に入っている
このように先輩や指導者から、
「どうするつもり?」
「なぜそう考えた?」
いつ聞かれても、すぐPAOSで考えを伝えるようにすれば、判断 → 根拠 → データ → 情報という思考の道筋が自然に整理されます
これが臨床推論のトレーニングになります。
PAOSで考えるメリット|「次に何をしたいか」から思考を進める
SOAPで考えようとすると、いきなり主観的データ(S)から入りますよね。
もちろん患者さんの感想は大切ですが、臨床では先に「次はこれをやってみたい」という判断が浮かぶことも多いはずです。
PAOSでは、まず P:次に何をしたいか を考えます。その判断が正しいかどうかを、
A(理由)→ O(データ)→ S(本人の反応)
で確かめていく流れです。
直感を否定するのではなく、直感を説明できる判断に変える。それがPAOSで考えるメリットです。

PAOSか、やってみるよ。

頑張ってね~。
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おわりに|臨床推論は道具で整理し、経験で鍛える
臨床推論は、最初から上手にできるものではありません。知識を覚えただけでは身につかず、経験だけでも整理されません。
大切なのは、考えたことを整理する道具と、それを何度も使う経験です。
SOAPは、正しい書き方を覚えるための型ではなく、自分の思考を言葉にして振り返るための道具として使うことで力を発揮します。
実習や臨床では、指導者の考え方が優先される場面も多いでしょう。それでも、自分なりに考え、根拠を整理し、説明しようとする姿勢は必ず評価されます。
臨床推論は、一度で完成するものではありません。考えを整理し、経験を積み重ねることで、少しずつ鍛えられていくものです。

それでは、SOAPを使って
練習を続けてみてね!



