こんにちは、理学療法士で
専門学校教員のダイ吉です!
リハビリでは、バランスを評価したり、転倒予防にアプローチすることが多いですよね。
やはりバランスというのは、動作や生活に必要なスキルですので、しっかりと評価しておきたいところです。
バランス検査は難しいので、
未だに苦労しているよ…。
慣れるには時間が掛かるよね。
そこで今日は、後方へのバランス障害に関係している、「背屈反応」という能力について掘り下げていきます。
背屈反応が出ないとどうなるの?
なんで背屈反応が出ないのかな?
どうしたら反応が出しやすくなる?
これらが理解できるよう、バランスとの関連性や評価の進め方、背屈反応を促通するための方法などを解説したいと思います。
背屈反応とは
生まれつき人間の身体には、姿勢を保持するための制御が複数備わっています。
その1つである背屈反応は、足関節を背屈させて踵だけでバランスを取る動きです。
骨盤をゆっくり後方に引くと、ある場所を境にして無意識に出現します。
バランスに及ぼす影響
なぜ、この反応が存在するのでしょうか?
支持基底面の変化
まずは、バランスの質を決定する、支持基底面から見てみましょう。
通常の立位であれば、両側の足底面で荷重をしているので、支持基底面は上の図のような形になります。
そして、後方にバランスが崩れそうになると、背屈反応により、つま先が浮き上がるので、
支持基底面は、約1/3の大きさになり、かつ後方に偏移した状態になります。
バランスが崩れたのに、
支持基底面が小さくなるの?
うん、そこがこの反応の、
面白いポイントなんだよね。
実は、バランスが崩れているにも関わらず、わざわざ支持基底面を小さくし、かつ身体の後ろ寄りに構えるのにはワケがあります。
それには重心の位置が関与しています。
重心のコントロール
立位姿勢で後方へ外乱が加わると、当然、重心は後方へ移動していきます。
その時点で、何も手を打たずに放置すると、重心はやがて、支持基底面よりも外に出て行ってしまいます。
この瞬間にバランスが崩れるので、できればその前に、何らかの反応で重心を制御しておきたいですよね。
そこで、重心が後方へ移動し始めた頃に背屈反応を出すことで、
後方に移動した支持基底面が、向かってくる重心を受け止めることができます。
要するに、支持基底面が小さくなるというデメリットよりも、先回りして準備する方が重要だということになります。
なるほど!肉を切らせて骨を
断つといったところだね。
ははっ、そういうこと!
元の姿勢に戻れる
背屈反応には、重心が後方に外れにくくなる!という以外に、もう1つの役割があります。
それは、新しい支持基底面よりも重心が前にあることで、元の立位姿勢に戻れることです。
重心を受け取ったら、元に返す…。
まさに、キャッチボールそのものですね。
だから、背屈反応は遅れても
ダメ、弱くてもダメってこと。
よし、これで役割が分ったよ。
背屈反応が出ない原因
当然ですが、背屈反応は出せないよりも、出せる方が良いです。
だって矢状面上において、重心の位置と支持基底面の関係を確認すれば一目瞭然です。
そこで次に、背屈反応が出ない原因について、簡単な例を挙げて行きたいと思います。
可動域が原因
足関節の背屈は、約20°の可動域があります。
しかし、拘縮や強直などにより、その動き自体が制限されている場合、当然ですが、背屈反応は出せません。
長期臥床では、足関節が底屈位で保持されていることが多く、背屈制限が生じることも珍しくありません。
筋の短縮、麻痺による筋緊張異常を防ぐためにも、可動域訓練や立位保持訓練を取り入れて、足関節の可動域を確保していきましょう。
筋力が原因
足関節の背屈は、前脛骨筋が主動作筋となっています。
この筋はとても力が強いため、ちょっとした運動不足が原因で、つま先が上がらなくなることは絶対にありません。
直結するのは、末梢神経障害です。
歩行時に、尖足を呈する人は、後方へのバランス反応が低下しているので、併せて評価しておくと良いでしょう。
こんなケースは、短下肢装具
なども視野に入れておこう!
感覚が原因
後方へバランスが崩れる際は、各関節や足底の荷重感覚などから情報が入ってきます。
その情報を頼りに、背屈反応を出すため、この辺りの深部感覚が低下している場合には、当然、バランス反応も低下していきます。
ロンベルグ徴候が出ている人など、後索障害の疑いがある場合には、バランス反応も併せて評価しましょう。
痛みや痺れなどの症状に
注意しながら進めよう。
やり方を忘れる
実は、このパターンが1番多いです。
え~、背屈反応って忘れるの?
背屈反応をずっと使わないと、
反応が鈍くなるんだよね。
その証拠に、背屈反応のやり方を教えてあげると、即時的に後方へのバランス能力がUp!という方をたくさん経験してきました。
といっても、口頭で説明したって出来るようにはなりません。そこで、背屈反応を促通させるための訓練を紹介したいと思います。
背屈反応を鍛えよう
背屈反応は反射ではないので、訓練によりコントロールできるようになります。
こうきたら、こう避ける!
こうなったら、こう動く!
このような反復練習により、短期間に再獲得できる能力なんですよね。
促通させる方法は、まずセラピストが後方から支え、恐怖心を与えない程度に、ゆっくりとフォームとタイミングを学習させます。
慣れるまでは、平行棒に掴まってもOK!
とにかく患者さんに、つま先を挙げたまま保持する感覚を、身体に染み込ませて下さい。
また、以下の項目を意識させると効果的です。
【意識させること】
① 股関節を曲げること
② 上肢を重りとして使うこと
③ つま先を上げること
④ 踵で体重を支えること
これらを少しずつ習得させながら、背屈反応を促通していきましょう。
そうすると、
つま先を挙げた方が楽になる!
ここまで後ろに行っても大丈夫!
といったように、運動を学習してきます。
この動きに慣れることで、恐怖心が無くなり、バランスに自信が持てるようになります。よかったら試してみて下さい!
おわりに
さて、数多くあるバランス反応の中で、背屈反応の役割について解説してきました。
やはりどのような検査も、セラピストが理解しているのといないのでは、質が大幅に違うと思います。
これから行う検査が、何のために行うものなのか、そしてその結果をどのように考察するのか、これらは経験が左右していきます。
ただ、何となく検査や評価をするのではなく、プロフェッショナルというプライドを持って、臨んで頂きたいと思います。
それでは、背屈反応の評価が
楽しく進められますように!
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