
こんにちは、理学療法士で
専門学校教員のダイ吉です!
本日は、ダブルニーアクションのお話です。
運動学の授業で習ったけど、よく分からないまま歩行観察をしていませんか?

あぁ、授業でやったけど
あまりピンとこなかったな。

うん、一瞬の出来事だし
イメージが沸きにくいよね。
そこで今日は、膝関節の2回の屈伸運動が分からない!という人に向け、このメカニズムと役割について解説していきたいと思います。
ダブルニーアクションとは
Double Knee Action = 二重膝作用
人間の正常歩行では、立脚相で1回、遊脚相で1回の計2回、膝関節の屈伸運動をします。

本当に2回も屈伸運動してる?
という人に向けて、非常に分かりやすい動画があったので、紹介したいと思います。
緑の扇型にある数値は、膝の関節角度です。
数値が大きくなれば伸展運動、小さくなれば屈曲運動ということです。
どうでしたか?
立脚相と遊脚相で、各1回ずつ、膝関節は屈伸運動をしていましたか?
この後、詳しく解説をしますが、ランチョ・ロス・アミーゴで記載しているため、一覧表を用意しておきますね。
アミーゴ方式 | 表記 |
イニシャルコンタクト [踵接地] | IC |
ローディングレスポンス [足底接地] | LR |
ミッドスタンス [立脚中期] | MSt |
ターミナルスタンス [立脚終期] | TSt |
プレスウィング [踵離地~つま先離地] | PSw |
イニシャルスウィング [遊脚初期] | ISw |
ミッドスウィング [遊脚中期] | MSw |
ターミナルスウィング [遊脚終期] | TSt |
混乱してきたら、この表を見直して下さい。
膝関節の屈伸運動
各相では、素早く数値が変化しているので、画像を使って細かく記載していきます。
立脚相での動き
膝関節の数値を見て下さい。
膝関節の角度は、ICで178°、LRで168°ですから、この2つの相だけで10°の屈曲運動が起こっていました。
その直後、膝関節は伸展運動に切り替わり、すぐに178°に戻っていますので、LRからMStで10°の伸展運動がありました。
よって、1回目の膝のアクションは、踵が着いてから、立脚中期までの間で起こっていることが解りますね。
遊脚相での動き
では2回目のアクションです。
PSwでの膝関節は162°ですが、つま先が離れた瞬間、股関節の屈曲と同時に、膝関節は急激に屈曲運動を始めています。
遊脚期に入った時には、141° であった膝関節が、MSwでは118°になっているので、瞬間的に40°以上も屈曲してます。
そして、118°まで屈曲運動を続けた膝関節でしたが、今度は踵接地に向け、振り子のような動きで伸展運動をします。
MSwの118°から、TSwには151°になっていますので、30°以上も伸展しています。

膝関節って忙しいね…。

コンマ数秒の世界なのにね。
膝関節の観察ポイント
立脚相の10°に対し、遊脚相では4倍の40°の屈伸運動が起こっていました。
当然、この割合は人により変化します。
それでは、膝関節の動きに着目した、歩行観察の特徴を説明していきます。
底屈運動と屈曲運動
観察はICからLRになります。
足関節の底屈は、前脛骨筋の遠心性収縮で行われています。
そのため、起始部である下腿を前方へ引っ張ることで、膝は前方へ移動しながら屈曲します。
この膝関節の屈曲は、大腿四頭筋の遠心性収縮で制御する必要があるので、タイミングとパワーに着目して下さい。
遠心性から求心性収縮
大腿四頭筋の収縮が、遠心性から求心性に切り替わると、2つの作用が生まれます。
1つ目は、前傾する下腿に、優しくブレーキを掛けること。
2つ目は、膝関節を伸展させることです。
この筋活動の切り返しが上手くいかないと、やはり膝関節は不安定になり、膝折れ転倒などの原因につながってしまいます。
これが、この相での観察ポイントです。
股関節の屈曲運動
股関節の屈曲が始まると同時に、つま先は床から離れていきます。
この股関節の屈曲運動で、わざと下腿を置き去りにすることで、慣性の法則により、膝関節を屈曲させるためです。
よって、股関節屈曲のパワーや速度が不足すると、膝関節の屈曲が小さくなることで、あまり足が上がらない歩容になります。

クリアランス低下については、
この記事をチェックしてね!
関連記事 トウクリアランスとフットクリアランスの違いを解説!
下腿の振り子運動
MSwでは、股関節の屈曲運動にブレーキをかけ、下腿の振り子運動を加速させます。
電車が急ブレーキをかけると、前にバランスを崩すように、大腿の動きが止まると、下腿は急いで前に進もうと膝関節が伸展します。
この運動は、先程と同様に、慣性の法則によるもので、大腿四頭筋の活動ではありません。
下腿の振り子運動は、歩行周期の最後の要ですので、各関節の運動と筋活動を、しっかりと理解しておきましょう!

立脚相も遊脚相も、
膝の動きが大切なんだね。

これで観察の幅が広がったね。
おわりに
ダブルニーアクションを意識して歩行を観察すると、色々な情報が入ってきましたね。
床の情報を捉える足関節、骨盤や体幹と連携する股関節、このどちらからも影響を受ける膝関節って、かなり重要です。
屈伸運動しかできないクセに、歩行では観察ポイントがかなり多いのが特徴です。
また、脳卒中片麻痺においても、かなり鍵を握る関節だと思いますので、これを機に苦手意識を無くして下さいな。

それでは、皆さんの歩行観察が
上手に進みますように!