こんにちは、リハビリ専門学校で
教員をしているダイ吉です!
本日の話は、歩行中の筋活動についてです。
歩行の評価というのは、遠くから眺めているだけではなく、筋をしっかり触診しながら進めることが重要です。
慣れないと、セラピストの手が邪魔で、患者さんの歩容が変わってしまうこともあります。
歩行中の触診は難しいよね。
まずは、対象者の歩幅と歩調に
合わせて歩けるようになろう!
今日、着目する中殿筋は、歩行の中でも特に重要な役割を持つ筋肉です。
中殿筋のトラブルは、即、異常歩行に直結しますので、その仕組みや、筋の触り方についても解説していきたいと思います。
中臀筋について
それではまず、中殿筋に関する解剖学、運動学を軽くおさらいしてみましょう。
中臀筋の形は?
中臀筋の 起始は腸骨後面で、 停止は大転子となっています。
でも実際は、起始は上後腸骨棘から、腸骨稜に沿って上前腸骨棘まで広がり、そこから大転子を頂点とする扇型になっています。
関節運動は?
主な関節運動は、股関節の外転です。
でも、前面の筋線維が優位に活動すると屈曲と内旋に関与し、後面の筋線維が優位に活動すると伸展と外旋にも働きます。
内転以外の運動に働くんだよ。
ほ~、マルチな筋肉だね。
支配神経は?
支配神経は、上殿神経(L4~S1)です。
実は、中殿筋は面積が広い割に、重要な神経や大きな血管が走行していません。
だからお尻に打つ筋肉注射は、中殿筋が選ばれるんですね。
へぇ、そうだったんだ。
坐骨神経に刺したら
大変だからね。
歩行中の中殿筋の役割
それでは、中殿筋のおさらいをした所で、歩行での役割に移っていきますね。
活動する歩行周期
歩行周期において、この筋が活動するのは、ミッドスタンス(立脚中期)です。
ちょっと、自分の身体確かめましょう!
大転子の上にある隙間に、自分の指を強めに押し込んだまま歩いてみて下さい。
立脚中期で荷重が移ると同時に、指が押し返されるのを感じ取れると思います。
片脚になった瞬間、
もの凄く押し返されたよ。
患者さんへの触診も
ここを触ってみようね。
過剰な内転の防止
立脚中期で片脚支持になると、骨盤は重力により回転運動(落下)を始めます。
この時、支持側の中殿筋が活動することで、急激な股関節の内転を防止してくれます。
この時の筋活動は遠心性収縮で、荷重移動に伴う、骨盤の側方移動にブレーキを掛けます。
この活動により骨盤が安定するため、しっかり足を挙げた歩行が可能になるんですね。
関連記事 中殿筋の筋出力Upで改善したトレンデレンブルグ歩行の一例!
体幹側屈の防止
骨盤の回転運動が起こると、運動連鎖により体幹の側屈(代償運動)が生じます。
中臀筋は骨盤に付着しているので、この筋肉だけでは、この代償は防止できません。
そこで、脊柱起立筋に補助を頼みます。
中臀筋の収縮に合わせ、反対側の脊柱起立筋群が活動することで、回転しようとする骨盤を制御することができます。
これなら骨盤を水平に保てますね。
立脚中期は、同側の中殿筋と
対側の脊柱起立筋に注目!
ミッドスタンスの異常歩行
それでは、中殿筋の役割が最も大きい、ミッドスタンスで出現する異常歩行を紹介します。
トレンデレンブルグ歩行
異常歩行の中でも知名度が高く、観察でも分かりやすいのが、トレンデレンブルグ歩行です。
この歩行は中殿筋歩行とも呼ばれ、立脚中期で、中殿筋の機能が不足することで起こる、有名な現象になります。
動画を観てみると解ると思いますが、右足を挙げた瞬間に、骨盤が右へ落下していますね。
まぁ、右手で杖持てよ!と思いますが…。
体重がある方だと、中殿筋の筋力で支えるには荷が重すぎますので、ダイエットも視野に入れるべきでしょう。
うっ、ダイエットか…。
ドュシェンヌ歩行
中殿筋が関与する、もう1つの異常歩行には、ドュシェンヌ歩行があります。
トレンデレンブルグ歩行と違い、立脚側の下肢の上に頭部が来るよう、同側への側屈が生じる歩容になります。
現象が、反対側に出現するトレンデレンブルグ歩行と、同側に出現するドュシェンヌ歩行。
この2つの違いは、臨床でも良く出会うので、必ず覚えておきましょう!
関連記事 トレンデレンブルグ歩行とドュシェンヌ歩行の違いと原因!
おわりに
さて、今回は歩行中の中殿筋にスポットを当てて、役割や触り方を解説しました。
やはり歩行分析には、筋活動に関する知識と、触診技術が求められます。解剖学と運動学を復習しながら、たくさん経験して下さい。
それでは、歩行分析が
上達しますように!