皆さんこんにちは、理学療法士で
専門学校教員のダイ吉です!
理学療法士を目指すと、もれなく筋の起始停止を覚える必要があります。
来る日も来る日も単語帳とにらめっこをし、何度も頭の中に叩きこみます。
単語帳も頭もパンパンだ…
まぁ誰もが通る道だよね。
筋の起始停止は、解剖学の問題として理学療法士の国家試験に出題されます。
でも、骨格筋は400種類あるといわれてますので、これだけで頭がパンクしちゃいますね。
ちょっと気になったので、過去10年分の理学療法士国家試験の問題の中から、筋の起始停止に関わる部分を抜き出してみました。
今日はその結果を、理学療法士を目指している受験生に、情報提供したいと思います。
筋の起始停止の出題傾向
骨格筋には、骨に付着する起始部と停止部があります。
一部の例外はありますが、基本的には骨格筋が縮むと、停止部が起始部に近づく運動が起こるんでしたね。
では、国家試験ではどのように出題されるのか、問題の例をいくつか見てみましょう。
組み合わせから選ぶ問題
選択肢には筋の名称と、付着する骨の部位が書いてあり、正しいもの or 誤っているものを選ばせる問題があります。
例えば以下のような問題です。
【第47回 PM52】
筋と上腕骨の付着部の組み合わせで正しいのはどれか。2つ選べ。
1.三角筋 ー 大結節
2.棘上筋 ー 大結節
3.棘下筋 ー 小結節
4.小円筋 ー 大結節
5.肩甲下筋 ー 大結節
ちなみにどれが正解か分かる?
え~っと、2と4かな…。
正解、さすがプク太くん!
一発で正解した場合でも、必ず残った選択肢も確認しましょう。
正しくは、1の三角筋は三角筋粗面、3の棘下筋は大結節、5の肩甲下筋は小結節です。
画像から選ぶ問題
次は少し難易度が上がります。
付着する部分の画像から、適切な場所を選択するような問題になります。
【第46回 PM51】
肩甲下筋の付着部位で正しいのはどれか。
この場合、まず肩甲下筋の停止を覚えていることが前提となり、その上で画像から適切な場所を選ぶ必要があります。
ちなみに、肩甲下筋は上腕骨小結節に停止しますので、答えは2となります。
画像で小結節が指せないと解けませんね。
やべっ、1かと思ってた…。
2つの骨に付着する問題
最後にもっと難しい問題があります。
それは停止の場所が1ヵ所ではなく、2つの骨に付着している筋を選択させる問題です。
【第47回 PM53】
尺骨と橈骨の両方に起始または停止するのはどれか。
1.肘筋
2.上腕筋
3.長母指屈筋
4.上腕三頭筋
5.長母指外転筋
う~ん、難しいですね。
ちなみに受験生の皆さんだったら、パっと解けちゃう感じでしょうか?
では解答です。
正しい答えは、5の長母指外転筋です。
起始:前腕骨間膜、橈骨・尺骨後側面
停止:第1中足骨・大菱形骨
しかし厚生省の発表では、長母指屈筋も正解になっていますので、3を選んでいても複数正解の扱いになります。
あと過去には、脛骨と腓骨の両方に付着する筋の問題も、出題されたことがあるので準備しておきましょう。
過去10年分の分析結果
それでは、過去問題10年分の分析結果について解説していきます。
出題された数
過去10年間において、起始・停止・付着部を問う問題は、全部で13問ありました。
いずれもPTとOTの共通問題。
ラインナップはこちら!
出題時期 | 問題内容 |
第52回 午前 54 |
第2中手骨底に付着する筋はどれか。 |
第52回 午前 55 |
胸椎に付着する筋はどれか。 |
第52回 午後 51 |
上腕骨小結節に付着する筋はどれか。 |
第52回 午後 55 |
脛骨と腓骨の両方に付着する筋はどれか |
第51回 午後 54 |
腸骨翼の外面に付着する筋はどれか。 |
第50回 午後 53 |
肋骨に付着する筋はどれか。 |
第50回 午後 55 |
筋と付着部の組合せで 正しいのはどれか。2つ選べ。 |
第49回 午後 53 |
筋と付着部の組合せで 正しいのはどれか。2つ選べ。 |
第47回 午後 52 |
筋と上腕骨の付着部の組合せで 正しいのはどれか。2つ選べ。 |
第47回 午後 53 |
尺骨と橈骨の両方に起始または 停止するのはどれか |
第46回 午前 52 |
筋と付着部との組合せで 正しいのはどれか。 |
第46回 午後 51 |
肩甲下筋の付着部位で 正しいのはどれか。 |
第45回 午前 52 |
筋と付着部との組合せで 正しいのはどれか。2つ選べ。 |
平均すると、毎年1点分といった所ですね。
問題の傾向
専門問題では、流行りの手技だったり新しい装具の登場により、問題の傾向が変わることがあります。
しかし、解剖の基礎分野ですので、たったの10年ぽっちじゃ傾向は変わりません。
過去10年間、いずれも同じような問題ばかりですので、特別新しい対策は必要ないんじゃないかと思われます。
どの本で覚えるべきか
過去10年分に出題された13問を、2つの本を使って答え合わせしてみました。
1つ目の本が「基礎運動学」です。
PTになる人で、この本を触ったことが無いって人は、1人もいないんじゃないですかね。
私自身も学生時代は、この本で起始と停止を覚えていましたね。
もう1つは、こちらの本です。
新徒手筋力検査法、いわゆるMMTの本ですね。
基礎運動学と違い筋のイラストが付いているので、こちらを使用して暗記している方も多いかもしれません。
で、答え合わせの結果はどちらも満点でした。
過去10年で出題された起始停止の問題は、とりあえず、この2冊の内容で100%解答できます。
あとは自分の好みで決めてね!
覚えるメリット
起始と停止を覚えても、1点しか貰えないのであれば、モチベーションは上がりません。
でも、起始停止が頭に入っていることで、解ける問題も増えてきます。
例えばこんな問題です。49AM54
【第49回 AM54】
足関節の背屈を起こす筋はどれか。
2つ選べ。
1. 前脛骨筋
2. 長腓骨筋
3. 後脛骨筋
4. 長趾屈筋
5. 第三腓骨筋
足関節の背屈ということは、筋の起始部は下腿の前面にあるはずです。
となると、長腓骨筋は外側だし、後脛骨筋も長趾屈筋も後面についているので、残りの1と5が正解って分かりますよね。
というように、解剖学の知識だけで運動学の問題も解ける場合があります。実地問題や、専門分野においても鍵を握ることもあるでしょう。
なるほど、おまけが付くのね。
絶対にプラスになるから頑張ろう!
おわりに
さて過去10年分に渡り、筋の起始停止に関する問題を分析してみました。
やはり単純に起始と停止の名称を覚えるより、筋の走行を理解している方が役に立ちますね。
頭の中で筋の通り道をイメージしていると、リハビリ中の患者さんの筋肉に触った時に得られる情報が、各段に多くなります。
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理学療法士になった時の財産になりますので、死ぬ気になって覚えて下さいね。
それでは本番で、起始停止の問題が
たくさん出題されますように!