こんにちは、専門学校教員で
理学療法士のダイ吉です!
PT・OTを目指す学生さん達が、学校で練習ができない唯一の検査が筋緊張検査です。
この検査だけは、ぶっつけ本番なんです。
そのため、中枢分野の実習に行くと筋緊張検査に苦戦してしまい、亢進や低下といった単純な記録をするだけに留まってしまいます。
実習中は怖くて動かせなかった。
最初は通常との違いに驚くよね。
そこで今日は、実習に不安を持つ学生さんに向け、筋緊張検査の進め方と、検査の記録方法について解説したいと思います。
被動性検査のやり方
被動性(ひどうせい)検査は、筋肉が動かされることで生じる抵抗感を評価します。
よって動かしている検査者の手で、筋緊張の異常を感じる必要があるんですね。
全可動域を他動で動かす
抵抗を感じ取る検査なので、関節は必ず全可動域を動かして下さい。
検査をする筋肉の起始と停止を、しっかりと引き離すように動かすのがコツです。
上腕二頭筋の検査であれば、図のように屈曲している肘関節を、完全に伸展にさせるように操作していきます。
一部の区間だけ動かしたり、途中で止めたりすると、正確な検査ができませんので、必ず全可動域動かしましょう。
抵抗感を分析する
この検査で感じる筋緊張は2種類です。
まず1つ目は、抵抗感の強さです!
【3段階の抵抗感】
① 抵抗感が強い(筋緊張亢進)
② ふつうの抵抗感(ノーマル)
③ 抵抗感が弱い(筋緊張低下)
抵抗が強い・抵抗が弱いは、完全に主観です。多くの患者さんを経験することで、強い or 弱いが判断できるようになります。
アシュワーススケールを
使うのも良いかも。
ん、アシュワーススケール?
これは、被動性検査で感じとった抵抗を、6段階に分けて評価するスケールです。
【Modifide Ashwors Scale】
グレード | 判定基準 |
0 | 筋緊張の増加はなし |
1 | 筋緊張は軽度の増加。わずかな引っ掛かりが断続的に出現。最終域付近で抵抗感が増加する。 |
1+ | 筋緊張は軽度増加。抵抗感が強くなっている範囲はその関節が動く範囲の半分以下である。 |
2 | ほとんどの範囲で筋緊張の増加がある。しかし関節の他動運動は簡単に行える。 |
3 | 抵抗感は著名に増加し、他動で関節運動をするのは大変なレベルである。 |
4 | 筋緊張の亢進により、他動で関節運動をするのは無理である。 |
※分かりやすいよう表はデフォルメしてます
慣れるまではこの表を参考にしながら、被動性検査の経験を積んで下さいね。
そして2つ目は、抵抗感の種類です。
【3種類の抵抗感】
① ずっと持続する抵抗感
⇒ 鉛管様固縮
② カクカクと断続する抵抗感
⇒ 歯車様固縮
③ 途中で変化する抵抗感
⇒ 痙 縮
固縮は錐体外路系の障害で、痙縮は錐体路の障害で出現する異常筋緊張です。
よく分からない場合は、動かすスピードを上げてみましょう。早く動かすと抵抗が強くなるのが痙縮で、変化しないのが固縮です。
このように、被動性検査では、抵抗感の強さと種類を分析して下さいね。
わかった、抵抗感の強さと、
種類を感じ取ってみるよ。
うん、何事もチャレンジだ!
被動性検査の記録方法
左右差の記録
脳卒中片麻痺の場合、左右差が顕著になりますが、必ず非麻痺側も記載して下さい。
非麻痺側の筋緊張はノーマル。麻痺側上肢は低緊張だが、肘関節伸展時にわずかな引っ掛かり感がある。
こんな感じで良いかと思います。
上下肢の差を記録
脳卒中でもパーキンソン病でも、上肢と下肢の筋緊張に、差が出ることは珍しくありません。
下肢が強い痙縮で、上肢が低緊張なんてこともありますので、左右を比較したら、上肢と下肢も比較して記録しましょう。
抵抗がある区間の記録
異常な筋緊張による抵抗感は、可動域の区間(レンジ)により変化します。
有名なのが、痙縮のジャックナイフ現象です。
関節を動かした直後は強かった抵抗感が、一定の区間を超えた瞬間、「スッ」っと軽くなることがあります。
折りたたんだナイフが、突然バチンッ!と閉まるように、抵抗感がいきなり変化するため、このような名前が付けられました。
【変化する抵抗感の例】
✔ 0~30°の区間で強い抵抗感がある
✔ 90°付近で引っ掛かる抵抗がある
✔ 最終伸展に近づくと抵抗が強くなる
ジャックナイフ現象以外にも、このような情報があれば、しっかりと記録しておきましょう!
介入の前後で変化があった
最後に学生さんに伝えたいことは、筋緊張に変化があった時の記録です。
介入による変化って何?
治療の効果判定ってことね。
筋緊張はとても変化しやすい現象のため、ストレッチで伸ばしたり、筋トレで縮ませると、すぐにその影響が出現します。
【変化する抵抗感の例】
✔ 30秒の持続伸長で抵抗感がなくなる
✔ 筋活動をさせたら抵抗感が増強した
✔ ホットパック後も抵抗感に変化なし
このように、筋肉に対して何らかの介入をした後は、筋緊張検査をもう一度行って、比較をしてみましょう。
筋緊張が亢進した・抑制した、こんな情報があれば、治療プログラムの決定に役立ちます。
ただ、( + )とか( - )などの記載よりも、ずっと患者さんのためになりますね!
なるほど、筋緊張検査って
色々な情報が分かるんだね。
慣れれば、筋肉の状態が
手に取るように分かるよ!
しっかり動かして、しっかり記録してね。
おわりに
さて、今回は実習を控える学生さんに向けて、被動性検査のやり方と記録方法について解説をしてみました。
今まで、「筋緊張亢進」とか、プラスやマイナスの表記だけで終わっていた人も、筋緊張検査の引き出しが増えたのではないでしょうか。
また、被動性検査の結果は、深部腱反射や筋力の検査結果と組み合わせやすいので、色々と考察が膨らんでくるはずです。
それでは、最後におさらいです。
<被動性検査のやり方>
・全可動域動を動かせ!
・抵抗の強さを感じ取れ!
・抵抗の種類を分析しろ!
・左右差を記録しろ!
・上下肢の違いを記録しろ!
・抵抗の区間を記録しろ!
・介入の前後で比較しろ!
筋緊張検査は、センスよりも経験です。
だから、暇さえあれば患者さんの身体を触り、とにかく多くの経験を積みましょう。
それでは、筋緊張検査と記録が
上手にできますように。