下垂足の歩き方!鶏歩の観察ポイントと尖足位との違いを解説

歩行
ダイ吉
ダイ吉

こんにちは、リハビリ専門学校で
教員をしているダイ吉です!

本日は、下垂足による鶏歩(けいほ)をテーマにして、歩行のお話をしたいと思います。

下垂足は、腓骨神経麻痺や脳卒中片麻痺、ポリオ後症候群、シャルコー・マリー・トゥース病などでみられる障害です。

プク太
プク太

下垂足は経験ないかも。

ダイ吉
ダイ吉

そっか、でもそのうち
担当すると思うよ。

私も神経内科領域が専門だった頃は、数えきれないほどの下垂足を担当しました。

そこで今日は、下垂足の歩き方と鶏歩の観察ポイント、さらに尖足位との違いについて解説したいと思います。

スポンサーリンク

下垂足の歩き方

ではまず、前脛骨筋をはじめとする、足関節の背屈筋群の筋力低下や、麻痺が原因で生じる下垂足(Drop Foot)の歩容から解説します。

足関節の底屈が起こる

プレスウィングでつま先が離地したあと、股関節の屈曲により下腿は、振り子の運動を起こします。

その時、背屈筋群の活動により足首は固定されているはずなんですが、

筋力が推進力に負けてしまうことで、文字通り下垂足になってしまいます。

さらにイニシャルスウィングからミッドスウィングに入る際、つま先だけが床面と引っ掛かってしまうため、転倒のリスクがあります。

ダイ吉
ダイ吉

これがトウクリアランス
低下の原因だね。

膝を高く持ち上げる

床面につま先が接触すると、転倒につながるため、下垂足がある人は防衛本能で膝を思いきり高く持ち上げます。

床から10cmくらい浮かさないと安心できないでしょうか、とにかく過剰に膝を高く持ち上げてしまいます。

プク太
プク太

つま先の引っ掛かりが
怖いのかな?

ダイ吉
ダイ吉

うん、頭では分かっていても
高く上げちゃうらしいよ。

股関節を素早く振り出す

さらに、つま先への意識は、股関節の振り出しにも影響を与えてしまいます。

膝を高く上げるためには、立脚初期(ISw)を短縮させ、最速+最短距離で立脚中期(MSw)に入ります。

そのスピードに付いていけない足部は、まるで置いてけぼりを喰らうかのごとく底屈します。

本人が良かれと思ってやっていることは、実は裏目に出ちゃっているんですね。

歩行速度が遅くなる

下垂足がなければ、通常の歩行においては踵から着地すると思います。

その後は足関節を中心に、足部が転がるように歩行が連続するため、非常に効率的な運動が連続します。

しかし、つま先から接地することは、ブレーキを握りながら自転車を漕ぐのと一緒で、とても非効率な歩行になってしまいます。

ただでさえ、膝を必要以上に高くあげ、素早い股関節の屈曲運動でエネルギーを無駄に消費していますので、これは大打撃ですね。

スポンサーリンク

下肢装具が必要になる

エネルギー効率が悪くなる条件が揃っていますが、下肢装具である程度改善できます。

実は、私たちの歩行では、足関節を背屈位にする必要はないんですよね。

底背屈中間位で十分なんです。

そのため底屈を制限する、「短下肢装具」を装着させるだけで、歩容は大きく改善します。

アンクルクロス、エバーステップ、オルトップなど、色々な種類がありますので、本人と相談しながら決定して下さい。

処方には時間と費用が掛かりますが、

Amazonで「下垂足」で検索してみると、1~2千円のサポーターが手に入ります。

治療用装具としてオルトップを処方すると、片足だけで1万円前後します(3割負担)。

患者さんの経済状況や必要度に応じて、提案してみるのも良いかもしれませんね。

鶏歩の観察ポイント

足を高く持ち上げるから、ニワトリみたいな歩き方になるだけではありません。

そこには、もう1つ大きな観察ポイントがあります。まずは下の動く画像を観て下さい。

実は立脚後期(TSt)で、股関節があまり伸展していないんですよね。

プク太
プク太

本当だ、なぜ伸展させないの?

ダイ吉
ダイ吉

立脚後期で足部が後ろにあると、その後の下肢の振り出し距離が長くなるからだよ。

膝の高さが安全圏に入る前に、下垂足によってつま先が床と接地してしまうので、股関節はあまり伸展できなくなるんですね。

足を高く上げてチョコチョコと歩くため、ニワトリのような歩容になってしまうんです。

これが鶏歩になる原因です。

だから、つま先のクリアランスだけに捉われず、立脚後期も注意して観察しましょう!

尖足位との違い

最後に、尖足位と下垂足の歩行の違いに触れておきます。

下垂足は、重力によってつま先が垂れ下がる現象でしたが、尖足位は常に足関節が底屈位の状態を指します。

動画で確認してみましょう。

う~ん、重力は関係なさそうですよね。

拘縮、強直、筋緊張亢進、アキレス腱の短縮と原因は色々とありますが、筋力ではないことは分かります。

そのため尖足位では鶏歩にならず、外転歩行やぶん回し歩行がみられます。

そして対応も、外科手術か金属支柱付きの装具になりますので、全く別ものだと考えておくと良いでしょう。

おわりに

さて、下垂足の歩き方と、鶏歩の観察ポイントについて解説させて頂きました。

たかが足首が背屈できないだけで、歩行にこれだけ影響が出るんですね。

やはり立位姿勢や歩行というのは、地面と接する足部の役割が大きいってことが分ります。

 腓骨神経麻痺だから下垂足が出現

 下垂足があるから鶏歩になる

こんな単純な分析は誰にでもできます。

セラピストを目指すなら、隣りあう関節と反対の下肢など、総合的に分析できるように訓練していきましょう。

まずは、実習で歩行観察の数をこなしてね。

ダイ吉
ダイ吉

それでは、下垂足と鶏歩が
上手に観察できますように。