こんにちは、リハビリ専門学校で
教員をしているダイ吉です!
本日は、下垂足による鶏歩(けいほ)をテーマにして、歩行のお話をしたいと思います。
下垂足は、腓骨神経麻痺や脳卒中片麻痺、ポリオ後症候群、シャルコー・マリー・トゥース病などでみられる障害です。
下垂足は経験ないかも。
そっか、でもそのうち
担当すると思うよ。
私も神経内科領域が専門だった頃は、数えきれないほどの下垂足を担当しました。
そこで今日は、下垂足の歩き方と鶏歩の観察ポイント、さらに尖足位との違いについて解説したいと思います。
下垂足の歩き方
ではまず、前脛骨筋をはじめとする、足関節の背屈筋群の筋力低下や、麻痺が原因で生じる下垂足(Drop Foot)の歩容から解説します。
足関節の底屈が起こる
プレスウィングでつま先が離地したあと、股関節の屈曲により下腿は、振り子の運動を起こします。
その時、背屈筋群の活動により足首は固定されているはずなんですが、
筋力が推進力に負けてしまうことで、文字通り下垂足になってしまいます。
さらにイニシャルスウィングからミッドスウィングに入る際、つま先だけが床面と引っ掛かってしまうため、転倒のリスクがあります。
これがトウクリアランス
低下の原因だね。
膝を高く持ち上げる
床面につま先が接触すると、転倒につながるため、下垂足がある人は防衛本能で膝を思いきり高く持ち上げます。
床から10cmくらい浮かさないと安心できないでしょうか、とにかく過剰に膝を高く持ち上げてしまいます。
つま先の引っ掛かりが
怖いのかな?
うん、頭では分かっていても
高く上げちゃうらしいよ。
股関節を素早く振り出す
さらに、つま先への意識は、股関節の振り出しにも影響を与えてしまいます。
膝を高く上げるためには、立脚初期(ISw)を短縮させ、最速+最短距離で立脚中期(MSw)に入ります。
そのスピードに付いていけない足部は、まるで置いてけぼりを喰らうかのごとく底屈します。
本人が良かれと思ってやっていることは、実は裏目に出ちゃっているんですね。
歩行速度が遅くなる
下垂足がなければ、通常の歩行においては踵から着地すると思います。
その後は足関節を中心に、足部が転がるように歩行が連続するため、非常に効率的な運動が連続します。
しかし、つま先から接地することは、ブレーキを握りながら自転車を漕ぐのと一緒で、とても非効率な歩行になってしまいます。
ただでさえ、膝を必要以上に高くあげ、素早い股関節の屈曲運動でエネルギーを無駄に消費していますので、これは大打撃ですね。
下肢装具が必要になる
エネルギー効率が悪くなる条件が揃っていますが、下肢装具である程度改善できます。
実は、私たちの歩行では、足関節を背屈位にする必要はないんですよね。
底背屈中間位で十分なんです。
そのため底屈を制限する、「短下肢装具」を装着させるだけで、歩容は大きく改善します。
アンクルクロス、エバーステップ、オルトップなど、色々な種類がありますので、本人と相談しながら決定して下さい。
処方には時間と費用が掛かりますが、
Amazonで「下垂足」で検索してみると、1~2千円のサポーターが手に入ります。
治療用装具としてオルトップを処方すると、片足だけで1万円前後します(3割負担)。
患者さんの経済状況や必要度に応じて、提案してみるのも良いかもしれませんね。
鶏歩の観察ポイント
足を高く持ち上げるから、ニワトリみたいな歩き方になるだけではありません。
そこには、もう1つ大きな観察ポイントがあります。まずは下の動く画像を観て下さい。
実は立脚後期(TSt)で、股関節があまり伸展していないんですよね。
本当だ、なぜ伸展させないの?
立脚後期で足部が後ろにあると、その後の下肢の振り出し距離が長くなるからだよ。
膝の高さが安全圏に入る前に、下垂足によってつま先が床と接地してしまうので、股関節はあまり伸展できなくなるんですね。
足を高く上げてチョコチョコと歩くため、ニワトリのような歩容になってしまうんです。
これが鶏歩になる原因です。
だから、つま先のクリアランスだけに捉われず、立脚後期も注意して観察しましょう!
尖足位との違い
最後に、尖足位と下垂足の歩行の違いに触れておきます。
下垂足は、重力によってつま先が垂れ下がる現象でしたが、尖足位は常に足関節が底屈位の状態を指します。
動画で確認してみましょう。
う~ん、重力は関係なさそうですよね。
拘縮、強直、筋緊張亢進、アキレス腱の短縮と原因は色々とありますが、筋力ではないことは分かります。
そのため尖足位では鶏歩にならず、外転歩行やぶん回し歩行がみられます。
そして対応も、外科手術か金属支柱付きの装具になりますので、全く別ものだと考えておくと良いでしょう。
おわりに
さて、下垂足の歩き方と、鶏歩の観察ポイントについて解説させて頂きました。
たかが足首が背屈できないだけで、歩行にこれだけ影響が出るんですね。
やはり立位姿勢や歩行というのは、地面と接する足部の役割が大きいってことが分ります。
腓骨神経麻痺だから下垂足が出現
下垂足があるから鶏歩になる
こんな単純な分析は誰にでもできます。
セラピストを目指すなら、隣りあう関節と反対の下肢など、総合的に分析できるように訓練していきましょう。
まずは、実習で歩行観察の数をこなしてね。
それでは、下垂足と鶏歩が
上手に観察できますように。