こんにちは、専門学校教員で
理学療法士のダイ吉です!
本日のテーマは、関節反力です。
第46回 PT/OT国家試験では「関節反力」という言葉で、物理が苦手な学生達が泣かされた過去があります。
ということで!今日は、
物理の勉強をするよ。
物理…。あ、お腹痛い
やっべ、ちょっと待って…。
おい、んなわけねーだろ。
物理が得意!っていう人は少数派ですよね。
私だって苦手です…。
だから本日は、この関節反力の解説を、極限まで簡単に進めてみようと思います。
PT第46回午後問69
過去のPT/OT国家試験において、最も受験生を悩ませたであろう問題はこれ!
似たような問題はありますが、関節反力という言葉が出たのは初めてです。
まずは、この言葉の意味を理解しましょう。
反力とは?
反力という言葉なら知っていますよね。
座っている時は、座面から体重と同じ力が上向きに働いており、立っている時は、足の裏に地面からの反力を受けているはずです。
だから、壁を殴れば痛いし、高い所から飛び降りれば怪我をします。
また、コップを床に落とせば床からの反力により砕け、ボールなら反発してバウンドします。
う~ん、僕の膝の痛みも、
反力が原因なのか。
体重が重い分、床反力が
大きいってことね。
関節反力とは?
反力って言葉に関節が付くと、途端に意味不明な言葉になってしまいますね。
まぁ、簡単に説明すると、骨と骨が関節の中で衝突する強さになります。
物体を100kgの力で押せば、100kgの力で跳ね返ってきます。
この力のやりとりが、関節の中でどう働いているの?というのが、この問題の本質です。
問題の解き方
この問題は、色々な錯覚を起こすよう、本当によく作り込まれています。
だから、まず余計な情報を排除し、情報を整理していくところから始めます。
関節は無視する
まだ関節反力がイメージできていないので、関節を無視して、前腕だけで考えてみましょう。
最後に情報が揃ってから、もう一度、関節を構成させるので、今は関節から離れましょう。
筋は紐だと考える
前腕を釣り上げている、上腕二頭筋も忘れましょう。これは筋じゃない、ただの紐だ!そう頭の中で変換して下さい。
ただし、硬くて頑丈な紐ですよ。
回転する力に着目する
問題では、前腕の重さだけじゃなく鉄球を持っていましたね。当然ですが、
前腕の落下により、回転力(モーメント)が発生します。
だから、この回転する力を計算しなくてはいけないと、理解をしておきましょう。
距離と重さを整理する
問題の図はゴチャゴチャして見づらいので、少し見やすく整理しておきました。
さらに、図に各部位の距離と重さを入力!
約1kgが10ニュートンなので、50Nを作り出す鉄球は、約5kgになります。
そして、ここが重要ポイント!
肘関節と上腕二頭筋が無くなったことで、支点からの距離が、ハッキリと見えてきました。
これは、関節と筋を無視したお陰ですよ。
回転力を求めてみよう
では、まずは前腕の計算から!
✅ 大事な公式
重さ[N] × 距離[m] =モーメント[Nm]
支点から0.15m離れた場所に、20Nの重さを加えると、
20N × 0.15m =3Nm
前腕の重みが、3Nmの回転力を作ります。
鉄球が作り出す回転力は、支点から0.35m離れた場所で50Nの重さなので、
50N ×0.35m =17.5Nm ですね。
ということで、紐よりも右側では、2つを合わせた20.5Nmのモーメント(時計回り)が、発生していることが分りました。
あとは、紐よりも左側で20.5Nmのモーメントを発生させれば、力は釣り合います。
距離とモーメントが分かっていて、重さ(N)だけが分からない場合の計算は?
✅ 大事な公式
重さ[N] × 距離[m] =モーメント[Nm]
プク太くん分かる?
えっと、モーメントを
距離で割るの?
うん、正解!
距離は0.05m、モーメントは20.5Nm。
式に当てはめると、
重さ[N]× 0.05m = 20.5Nm
⇒ 20.5 ÷ 0.05=410Nになります。
よって、向かって左側から、410Nの反時計回りの重さを加えると、ちょうど釣り合うという計算になります。
答えを求めよう
それじゃ、最初に分解した上腕骨を戻し、肘関節を復元していきましょうか!
前腕が時計回りに回転する力は、反対側の尺骨頭を410Nの力で持ち上げる力と一緒。
では、その力は誰が押さえつけているの?
それは、上腕骨の衝突で生じる「関節反力」により生み出されています。
だから、肘関節にかかる関節反力も410Nということで、4番が正解になります。
いや~、長い道のりでした。
距離に惑わされて、肘関節から計算した人は、恐らく480Nを選ぶでしょう。
関節反力の意味が分からない人は、解答を聞いてもチンプンカンプンだったでしょう。
本当によく作られた問題だね。
初見じゃ絶対ムリだよ…。
おわりに
はい、じゃあ最後におさらい!
① 関節なんて無視しろ!
→ 関節反力は最後に解決すりゃいい
② 上腕二頭筋を紐だと思え!
→ 筋の張力はこの問題には関係なし
③ 支点を見失うな!
→ 上腕二頭筋の停止部が支点である
④ 2つのつり合う条件を探せ
→ 支点の左右で釣り合うこと
→ 尺骨と上腕骨でつり合うこと
ぶっちゃけ、この問題ができないからといって、臨床で困る事はないと思います。
だけど、このような難しい問題を分析し、少しずつ解いてく過程は、評価、治療において必要なスキルだといえます。
だから、物理の問題が出たらラッキーってくらい、勉強してもいいんじゃないかな!
それでは、国家試験の問題に
関節反力が出ますように!