
こんにちは、専門学校教員で
理学療法士のダイ吉です!
今回は、PT/OT国試にも出題される、上肢装具(スプリント)について解説します。

スプリントって変形を
防ぐやつだっけ?

うん、その他にも色々な
役割があるけどね。
スプリントは、病気やケガで低下した手の機能を補う、オーダーメイドの装具です。
主にプラスチック素材を熱で加工して製作され、患者さんの手の形や目的に合わせて微調整できるのが特徴です。
スプリントの役割と目的
スプリントの役割は、大きく分けて2つです。
① 固定して守る(静的)
② 力を加えて動かす(動的)
静的スプリントは、関節を良肢位で固定し、炎症の沈静化や拘縮・変形の予防を目的とします。
一方、動的スプリントは、ゴムやバネなどの張力を利用し、筋肉を補助したり、硬くなった関節を矯正したりします。

ゴムやバネがあれば動的、
なければ静的ってことね。

そうそう、バッチリだよ!
まずはこの基本ルールを頭に入れて、国試頻出の上肢の神経麻痺との組み合わせについて整理していきましょう。
橈骨神経麻痺「下垂手・下垂指」
まずは、橈骨神経麻痺で出現する症状と、適応するスプリントの紹介です。
橈骨神経は骨折による合併症や、絞扼性神経障害による麻痺で下垂手が出現します。

▲図解:橈骨神経麻痺と下垂手
手関節をまたぐ伸展筋群が麻痺することで、手首がダラリと下がる「下垂手」が出現。
コックアップスプリント(静的・手首固定)
手関節が垂れ下がるなら、背屈で固定させるスプリントを装着させます。

▲図解:コックアップスプリント
前腕で固定し手掌面を支える装具。手関節を背屈位で固定する静的スプリントです。

垂れ下がらないように、
固定するだけの装具だよ。
オッペンハイマースプリント(動的・高位麻痺)
固定ではなく、背屈運動をさせたい場合、動きがあるスプリントが適応となります。

▲図解:オッペンハイマースプリント
前腕で固定し、バネで手関節の背屈運動を補助する動的スプリントです。

これは動きをアシストする
装具ってことね。

コックアップスプリントに
動きを取り入れた装具だね。
トーマススプリント(動的・低位麻痺)
最後は下垂手だけではなく、下垂指にも適応される装具の紹介です。

▲図解:トーマススプリント
前腕で固定し、ゴムでMP伸展と手関節背屈を補助する動的スプリントです。

あれ、2つの違いは…?

どこで橈骨神経がダメージを
受けるかで分けるよ。
【高位と低位の違い】
上腕骨骨幹部骨折や、ハネムーン症候群など、肘よりも上で橈骨神経がダメージを受けることを高位麻痺と呼びます。また回外筋症候群など、肘よりも遠位での障害では手関節よりもMP関節伸展に障害が出ます。その場合、下垂指に対してトーマススプリントや逆ナックルベンダーが適応となります。
橈骨神経麻痺の適応まとめ
- 背屈位で固定 ⇒ コックアップ
- 背屈運動を補助 ⇒ オッペンハイマー
- MP伸展運動を補助 ⇒ トーマス
正中神経麻痺「猿手」
続いては正中神経麻痺です。
正中神経麻痺による手の異常では、母指球の萎縮による猿手が有名です。

▲図解:正中神経麻痺と猿手
母指球筋の萎縮により親指の付け根が平坦になり、対立運動が困難となる。

中手骨のアーチがなくて、
猿の手みたいになるよ…。
短対立装具(低位・手首OK)
橈骨遠位端骨折や手根管症候群など、肘よりも遠位での障害では、母指を内側に押し込む補助が必要となります。

▲図解:短対立装具
平べったいアーチのない手に、丸みをつけるような静的スプリントです。
長対立装具(高位・手首NG)
上腕骨顆上骨折など、肘よりも近位の障害では、手関節屈筋群が弱くなります。
そのため、手首の固定力がある長対立装具が適応となります。

▲図解:長対立装具
短対立装具の役割と、手関節屈曲をサポートする静的スプリントです。
ランチョ型という名前で出題されることもあります。念のため覚えておきましょう。

母指を内側に押したら、
正中神経麻痺ってことね。
尺骨神経麻痺「鷲手」
最後は尺骨神経麻痺です。

▲図解:尺骨神経麻痺と鷲手
手内筋(虫様筋・骨間筋)の麻痺により、MP関節が反り返る。

内在筋マイナス肢位とか
かぎ爪変形とも言うよね。
虫様筋カフ(静的・MP屈曲)
虫様筋が萎縮して伸びているから、MP関節を屈曲位で保持させるカフです。

▲図解:虫様筋カフ
手背面と基節骨を固定。MP関節を屈曲位で保持させる静的スプリントです。
ナックルベンダー(動的・MP屈曲)
鷲手に適応するスプリントはシンプルです。

▲図解:ナックルベンダー
ゴム・ワイヤーの力を利用し、MP関節を屈曲位で保持させる動的スプリントです。

ナックルは拳って意味だし
分かりやすいね。

逆ナックルベンダーも
あるんだよ。
ナックルベンダーがMP屈曲させるなら、逆ナックルベンダーは伸展させるもの。つまり、下垂指(橈骨神経麻痺)の適応になります。
脊髄損傷(C6・C5)の装具
ここからは番外編です。
末梢神経麻痺ではありませんが、脊髄損傷(頚髄損傷)の装具も国試の鉄板です。
フレクサーヒンジ・スプリント(C6)
C6レベルでは、手首を反らす筋肉(長・短橈側手根伸筋)が生きています。

手首を背屈させると、指が自然と曲がる現象(テノデーシス・アクション)を利用して、対立運動を可能にする装具です。

つまみ動作のために、
母指が内側に向くよう
調整されているよ!
BFO(C5)
C5レベルでは、三角筋や上腕二頭筋を動かす力が残っています。

BFOはアームバランサーとも呼ばれ、腕の重さを無重力化することで、肩のわずかな力で食事動作などを可能にします。
【おまけ】パンケーキ型(休息位装具)
最後に、選択肢でよく見る「パンケーキ型」を紹介して終わります。

名前はよく出るけど、
どんな装具なのか
ずっと気になってた。

手指の丸まりを予防したり
指と指のスペースを
確保する装具だよ!

脳卒中片麻痺では、麻痺と痙縮により手指を握りこんでしまうことで、かなり不衛生な状態を作ってしまいます。
そのため、パンケーキ型スプリントを装着させ、指同士の間隔(ウェブスペース)を確保しながら変形の予防をします。
【実戦】国試過去問にチャレンジ!
記事で学んだ知識を使って、実際の国家試験問題を解いてみましょう。
装具の名前だけでなく、問題文と図から神経を特定するのがポイントです!
第45回 PT国家試験 午後17
問題:21歳の男性。右上腕骨骨折。図に示す領域の知覚が脱出し、運動麻痺がみられる。装着するスプリントで適切なのはどれか。

クリックして答えと解説を見る
正解:3
【解説】問題文と画像から橈骨神経麻痺読み解くことができます。
- フレクサーヒンジ・スプリントはC6の脊髄損傷患者に適応
- 対立運動は正中神経麻痺
- 下垂手・下垂指に対応するトーマススプリントが正解
- ナックルベンダーは尺骨神経麻痺の鷲手に適応
- やはり対立運動なので正中神経麻痺に適応
第55回 PT国家試験 午後19
問題:66歳の男性。意識障害で右上肢を下に腹臥位で発見された。入院後1か月で訓練中に右手のしびれを訴え、図のような手を呈した。この患者の右手に適応となるのはどれか。

クリックして答えと解説を見る
正解:2
【解説】画像から親指と人差指の間のへこみと、MP関節の過伸展が読み取れます。
- BFO → C5頚髄損傷
- 鷲手 → 虫様筋カフでMP関節を屈曲位に保持させる
- 短対立装具 → 猿手
- 手関節駆動式把持装具 → C6頚髄損傷(テノデーシスアクション)
- コックアップ → 橈骨神経麻痺(下垂手)
お疲れ様でした、簡単でしたかね?
おわりに
今回は、国試頻出の上肢装具(スプリント)について解説しました。
暗記ではなく、疾患から「なぜ、その装具が必要なのか?」という理由を考えておくと、楽に問題が解けると思います。
- 神経が麻痺する(原因)
- 動きが消える・変形する(症状)
- 足りない機能を補う(装具)
国家試験では、この3ステップで考えて、正解にたどり着いて欲しいと思います。

それでは、スプリントの
問題が解けますように!

