こんにちは、理学療法士で
専門学校教員のダイ吉です!
本日のテーマは、丸太様の寝返り動作です。
寝返りは、歩行や立ち上がり動作と違い、一瞬で終わってしまうため、評価が上手くできないって方も多いと思います。
なんか、眺めているだけで
動作分析が進まないよ。
動作分析が進まないと、
プログラムも組めないね。
ということで今日は、寝返り動作の中でも観察が簡単な、「丸太様の寝返り」を例に挙げ、観察ポイントと訓練方法を解説してみます。
丸太様の寝返り動作とは?
通常の寝返り動作では、身体を捻じる「体軸内回旋」により、回転する力を作ります。
ただし何らかの問題を抱える場合、頸部や体幹を捻じることなく、そのままの形で寝返りをする方法もあります。
絶対に捻じれない、丸太の様な
寝返り動作を指すんだね。
うん、丸太が捻じれたら怖い。
例えばパーキンソン病のように、体幹筋がガチガチな人は、回旋運動を使わない、丸太様の寝返りしかできません。
でもこの方法は、柔らかいマット上や、狭い場所でも寝返りがしやすいという、特徴もあるんですよね。
この動作の観察ポイント
丸太様といっても、本当に身体が真っ直ぐの状態からは、さすがに回転運動はできません。
そのため、位置エネルギーと重力を上手に使い、身体を回転させる力を生み出します。
図のように、下肢を持ち上げて、位置エネルギーを溜めておけば、あとは少しズラすだけで回転運動が始まります。
ふむ、これなら体幹が
丸太でも、回転できるね。
じゃ、この寝返り動作を、
相分けして観察してみよう。
相ごとに、どのような能力が必要なのか、1つずつ確認してみましょう。
下肢を挙上する能力
まず、背臥位で下肢を持ち上げる相です。
この時に必要な能力は、頚部、体幹、股関節の屈筋群のパワーになります。
当然、この姿勢を取るための可動域も必要になりますが、わざわざゴニオメーターで確認するほどではないでしょう。
この姿勢を取らせてみて、
キープできるか確認しよう
寝返り側に倒す能力
続いては、横に倒れる相に移ります。
ここでは、下肢の重みで骨盤も回転しますが、一緒に脊柱も回転させる必要があります。
腹斜筋の筋緊張が低いと、骨盤が回転しても体幹は残るため、寝返りができません。
だから、このパターンで寝返るためには、体幹回旋筋のパワーと、ある程度の筋緊張が必要になるんですね。
逆に、体幹の筋緊張が高い人は
力が無くても回転できるよ。
側臥位を保持する能力
最後は回転が止まり、側臥位になる相です。
観察する部分は特にないので、寝心地を聞いたり、肩や腰の痛みがないかをチェックして終わりになります。
この確認をすることで、丸太様の寝返りの安全性や、実用性が評価できますね。
体軸内回旋が苦手な人の訓練
丸太様で寝返っている人は、その他の方法を、新しく習得するのは難しいと思われます。
ということで、丸太様の寝返りを強化するための訓練を、3つほど紹介しておきます。
屈筋群の強化
先程、頸部、体幹、股関節の屈筋群のパワーが必要と解説しました。
この全てを同時に鍛えられるのは腹筋です。
訓練で腹筋をやらせることが多いですが、人によっては腹筋をやっているように見えて、実は寝返り動作の練習なのかもしれませんね。
この患者さんに、腹筋を
やらせる目的はなんですか?
うん、寝返りの練習なんだよ。
あ、そうですか…。
(意味わからん)
こんなやりとりが、生まれることも?
体幹の捻じれに慣れる
続いては、下肢屈曲位で挙上した状態から、腹斜筋の筋力を使って、左右にコントロールする能力を訓練させましょう。
その訓練には、セラボールがおすすめです。
下肢を乗せたまま、ゆらゆらと左右に転がし、しっかり止める訓練を反復させます。
この時、体幹筋をしっかり意識させるために、腹筋群の収縮を、手で確かめながらやってあげると効果的ですよ。
いざり動作の強化
丸太様の寝返りしかできない人は、基本ベッド上でのいざり動作がヘタっぴです。
我々は身体を揺さぶりながら、左右へ少しずつ移動できますが、体幹が固い人にとっては難易度が高めです。
そのため、ブリッジを強化することで、ダイナミックないざり運動を獲得させましょう。
お尻をしっかりと持ち上げ、ちょっとずつ左右へ移動する訓練をさせます。
スペースが作れるようになれば、寝返り動作の成功率も向上しますので、間接的な寝返り訓練といえますね。
う~ん、これも寝返り動作の
練習に繋がってるのか。
しっかり分析をすれば、
訓練内容にも幅が出るね!
おわりに
さて本日は、丸太様の寝返り動作について、掘り下げてみました。
患者さんができない動作を、そのまま練習させるのは、リハビリとはいえませんね。
セラピストらしく動作を観察し、そこから必要な情報を分析して、効率の良い動作を指導していきたいものですね。
そのためには、まず簡単なパターンから練習していくと、評価結果と訓練内容が結びついて良いイメージが作れると思います。
それでは、丸太様の寝返りが
上手に観察できますように。