
こんにちは、理学療法士で
学校教員のダイ吉です!
今日は、リハビリ実習の中でも特にハードルが高い「他部門情報の集め方」を解説します。
実習では、指導者から「明日は他部門情報をとってきてね」と言われることがありますが、
何を聞けばいいの?
怒られずに質問できるかな…?
そんな不安を抱える実習生はとても多いです。

医師に緊張して上手に
質問できなかった…。

最初の実習なんかだと、
特にそうなっちゃうよね。
でも、質問の“型”とポイントさえ分かれば誰でもうまく聞けるようになります。
今日は、医師・看護師・リハ職・MSWなど、職種別に「怒られない質問のコツ」をわかりやすく紹介していきます!
他部門情報とは?実習で必要な理由
他部門情報とは、医師・看護師・リハ職・MSW・ケアマネ・家族など、“患者さんに関わる職種から得られる情報” のことです。
実習が進むと、指導者はこう言います。
「Drに予後を確認しておいて」
「看護師さんにADL聞いてみようか」
う~ん、なぜここまで“他部門”にこだわるの?
理由①:治療方針を職種間で確認
たとえば、
リハ:早く立たせたい
看護:転倒リスクが高いので慎重に
医師:安静度の制限がある
このように、職種によって重視する点が違います。そのズレを埋めるのが 他部門情報の役割 なんですよね。
理由②:あなたの情報収集力を評価
実習評価表(成績表)には必ず、
・情報収集の積極性
・必要な情報を選択できているか
・他職種とのコミュニケーション
に関する項目があります。
つまり、他部門情報が取れないと、治療もレポートも成績も伸びないということになります。
理由③:現場の本音が手に入る
カルテには書けない情報がたくさんあります。

たしかに、カルテには
ADLの細かい動きとか
書いてないよね…。

そうそう。入浴の様子、
夜間の動き、家族の意向、
病室での様子…。
こういうリアルな情報は、他部門から聞くしかないんですよね。

怒られない質問の基本ルール

実習で「他部門情報を聞いてきて」と言われても、どう話しかければいいのか分からない…
という実習生は本当に多いです。
でも安心してください。“怒られない聞き方”には共通の型があります。
ここでは、明日からすぐに使える基本ルールを紹介します。
事前準備のポイント
質問に行く前に、まずこれだけは確認しておきましょう。
聞きたい内容を1つに絞る
「予後について」、「夜間ADLについて」など、テーマを明確にしましょう。
カルテに書いているか確認する
すでに記載されている情報を聞くと、忙しいスタッフの手を止めてしまうので絶対NG。
質問の理由を用意しておく
「評価に必要だから」、「患者さんの安全のため」など、ちゃんとした理由があると、スタッフは協力してくれやすいです。

聞きたいことが多すぎて、
毎回パニックに
なるんだよね…。

大丈夫。質問は1つに
絞るだけでも、話しかけ
やすさが全然変わるよ。
指導者からいつ“Goサイン”が出てもいいよう、日頃から準備を心がけましょう。
関連記事 実習先に電話を掛けよう!確認する内容から不在時の対応まで
話しかけ方の型
怒られずに、スムーズに他部門情報を聴取するためには、以下の3ステップを使って印象アップを狙いましょう。
① 結論から伝える
「Aさんの夜間ADLについて確認させてください」
② 目的を添える
「今日の評価で必要な項目があって…」
③ 質問を短くまとめる
「夜間のトイレ動作の介助量は日中と同じでしょうか?」
この流れだけで、忙しいスタッフのストレスを大きく減らせます。
さらに、質問は “Yes/Noで答えられる形” にすると会話がスムーズです。
関連記事 リハビリの実習で使える!良い印象を与える積極的な行動とは
NG質問と注意点
怒られやすい質問には共通点があります。
抽象的すぎる質問
例:「どうですか?」
→ 何を聞きたいのか分からず、相手に負担がかかってしまうため。
カルテに書いてあることを聞く
→ 調べれば分かることを聞いている!と受け取られがち。
忙しい時間帯に突撃する
→ 朝の申し送り前後、処置中や回診中は避けるのが基本。

まずは、相手に合わせる
ための準備が重要だね

う~ん、準備せずに
変な質問してたかも…。
この3つに注意すれば、怒られるリスクがぐっと減ります。安心して質問できますね。
部門別|他部門情報で聞くべき質問例

他部門情報を集めるとき、
「何を聞けばいいのか分からない…」
という悩みは、ほぼ全ての実習生がぶつかる大きな壁ですよね。
そこでここでは、医師・看護師・リハ職・MSW・ケアマネ・家族・同室者など、主要な職種ごとに、
何が分かるのか
どこを確認すべきか
実際に使える質問例
を、できるだけ短く・実用的にまとめました。実習の現場ですぐに使える“テンプレ”として活用してくださいね。
医師からの情報
いきなりのラスボス登場です。

医師は 最も重要で、最も忙しい相手。質問の“質と短さ”がとても大事になります。

ひえぇぇぇ…。

対策すれば大丈夫!
ここでは、最低限おさえておきたい3つのポイントを紹介します。
予後(今後の見通し)
評価や治療方針を立てるうえで必須です。
質問例_
「Aさんの歩行能力の予後はどのように考えていますか?」
「退院までに到達してほしいADLはありますか?」
禁忌・注意点(リハの安全ライン)
処方を出している医師として、“やってはいけないこと”を必ず確認しておきましょう。
質問例_
「運動負荷の上限や注意点はありますか?」
「疼痛や血圧上昇のリハビリの中止基準はどれくらいでしょうか?」
画像・医学的情報(リハの根拠づけ)
事前にカルテを読んだ上で、理解が難しい部分を確認しましょう。
質問例_
「このCT所見だと、Bさんのどの症状と関連が強いのでしょうか?」
「機能改善の見込みに影響する点があれば教えていただけますか?」
医師への質問ポイントまとめ
- 質問は1つに絞る
- 結論 → 目的 → 質問 の順で伝える
- 忙しい時間帯は避ける(回診前後はNG)
看護師からの情報
次は看護師さんです。

病棟の看護師さんは、患者さんの“生活の実態”を一番よく知っている職種です。
カルテだけでは絶対に分からない、その人の本当のADLを把握するために、必ず情報をもらう必要があります。
それでは、すぐに使えるポイントを3つに絞って説明していきたいと思います。
日中ADLの実態(入浴・排泄・移乗)
看護師さんは、入浴・排泄・更衣・移乗など、“生活場面のリアル” を日常的に観察しています。
質問例_
「トイレ内は、どの程度介助が必要ですか?」
「移乗のときに不安定な場面はありますか?」
「入浴時に疲労や息切れは出ていますか?」
こうした情報は リハが判定しづらい“生活能力の核心” になります。
夜間の状態・リスク
夜間のADLは 看護師だけが把握できる領域 です。特に実習生は夜間観察ができないため、ここの聞き取りは必須になります。
質問例_
「夜間のトイレは自立ですか?呼び出しは多いですか?」
「夜間の転倒リスクが高い行動はありますか?」
「寝返りや起き上がりは介助が必要ですか?」

夜の様子って、ぜんぜん
分からないんだよね~

そうだね。夜間ADLは評価の
盲点だから必ず確認しよう。
※リハでは夜間情報は一切取れないため、看護師だけが持つ超重要データとなります。
看護方針・介助基準(リハとのズレ防止)
看護とリハでは、“介助の基準”が違うことがよくあります。
ここを確認しておかないと、「あの学生、危ないことしてる」 と誤解されて怒られやすくなるので注意が必要です。
質問例_
「歩行介助はどのレベルで行っていますか?」
「リハ中に注意しておくべき点はありますか?」
「生活動作で特に気をつけていることはありますか?」
看護師さんの方針を聞いておくと、リハの介入方針と衝突しなくなるため、怒らるリスクが大幅に軽減しますね。
看護師への質問ポイントまとめ
- 生活場面の“本当のADL”は看護師に聞け
- 夜間ADLはリハが知れない最重要情報
- 看護方針とのズレをなくすと信頼される
- 質問は「結論 → 理由 → 短い質問」でする
関連記事 リハビリ実習生でも簡単!ベッドサイドのリスク管理について
リハ職(PT/OT/ST)からの情報
続いては同門スタッフへの聴取です。

リハ職からの情報は、“自分とは違う専門視点を補う” のが目的です。
PT学生であれば OT/STを、
OT学生であれば PT/ST を…
というように、“見えていない角度” を埋めてもらうパートとなっております。
他職種ならではの“着眼点”を教えてもらう
PT学生がOTを見学した後の聞き方の典型例を紹介します。
質問例_
「OTの視点では、Aさんの上肢の使い方で気になった点はありますか?」
「作業場面で疲労が出ていたところはありますか?」
「生活動作の中で課題になりそうな動きはありますか?」
PTだけでは気づきにくい、巧緻性・注意・作業耐性・生活上の癖などが一気に手に入る、それがOT見学のメリットです。

ふ~ん、生活上での手の
重要性が見えてくるんだね。

そう。生活場面のリアルが
見えてくるんだよね。
自分の評価の抜けを補ってもらう
OT・STがすでに評価した部分には、PT学生が見逃しているところがあるかもしれません。
質問例_
「私が着目している歩行で、まだ見落としていた点はありましたか?」
「OTから見て、Cさんの上肢リーチ動作は日常で困りそうですか?」
「STの視点で、注意すべき嚥下のサインはありますか?」
👉 レポート精度が一気に上がる。
👉 実習指導者に「多職種連携」をアピールできる。
今日の安全面・注意点
PT/OT/STは、治療中に最も“危ない瞬間”を知っている。
質問例_
「作業中にバランスを崩す場面はありましたか?」
「疲れやすいタイミングはありますか?」
「介入で絶対に避けた方がよい姿勢や動きはありますか?」
👉 医師・看護師ほど慎重でなくてOK。
👉 実習生がケガさせないための“最低限のライン”を聞くイメージ。
リハ職への質問ポイントまとめ
- PTが見落としやすい部分を補ってくれる存在
- 評価の抜け漏れが補えるためレポートが書きやすい
- 安全のラインだけしっかり確認すればOK
- 医師・看護師ほど深く聞く必要はない(短時間で完了)
関連記事 リハビリ実習に役立つ!もしも症例が脳卒中片麻痺だったら?
医療ソーシャルワーカーからの情報
MSWは、家族の支援力・住宅環境・退院先など、生活に直結する情報を持っています。

短い時間の中でも、ゴール設定の方向性をつかんでいきましょう。
質問例_
「家族の介助に対する意欲はどの程度期待できますか?」
「自宅の段差や浴室など、環境面の課題はありますか?」
「現時点での退院先(自宅/施設)の見通しはありますか?」
ケアマネジャーからの情報
ケアマネは 病院には常駐していないため、実習中に直接会えることは少ない職種 です。

それでも短い会話ができれば、「在宅で実際に困る動作」や支援の方向性を知る大きな手がかりになります。

あれ?ケアマネさんは
病院にいないの?

うん、在宅チームだからね。
でも会えたら大チャンス。
ケアマネさんは、在宅調整や退院時カンファに参加するため、病院へ来ることがあるので、そこがねらい目です。
質問例_
「利用している介護サービスはどれですか?」
「在宅で特に負担になっている動作はありますか?」
「今後の支援方針で重要な点はありますか?」
家族からの情報
患者さんの家族は、医療スタッフも把握しきれない「普段の生活のリアル」 を知っている貴重な情報源です。

コロナ以降は家族の来院が減っていますが、もし病棟でお会いできたら、ぜひ一声かけてみてください。
家族が知る“普段の様子”は、スタッフでも知ることができない貴重な情報になります。
質問例_
「普段のご様子で、気になっていることはありますか?」
「入院前の生活で、困っていたことは何かありましたか?」
「病院での様子と、いつもの様子に違いはありますか?」
同室者からの情報
同室者の方は、スタッフよりも患者さんの“素の姿・生活リズム” を知っていることが多いです。

あくまで参考ですが、病室での様子を把握するのに役立ちます。
質問例_
「夜間に困っていそうな場面を見たことはありますか?」
「普段の起き上がりや移乗はどんな様子ですか?」
「よく話している不安や困りごとがあれば教えてください。」
質問はキャッチボール方式で
他部門情報の聴取では、あれはどうですか?これはどうですか?と単発の質問を繰り返すのはやめましょう。

Aさんが自宅に帰るまでの
OTのゴールはなんですか?

家事動作の耐久性で、台所で
20分ほど立ちながら料理が
行えるようになることだね。

PTでも耐久性について訓練を
続けていますが、入院時と
比較して経過はどうですか?
このように、具体的な質問をして、かつ相手の答えに対して質問をするなど、会話のキャッチボールを意識して下さい。
うん、かなり難しいよね…。

おわりに
実際に働くと、以下のことに気づきます。
自分が知りたいことを知るためには、どうすれば良いのか!この強い気持ちが行動力となり、良い評価や治療につながるんですよね。
だから、実習中も情熱的に取り組もう!
その想いが、きっとバイザーにも良い印象を与えられると思いますよ。

それでは、他部門情報が
上手に収集できますように。


