皆さんは、日頃から自分で目標を立て、その達成に向けて努力をしていますか?
リハビリの実習では、適切な治療をする、患者さんに信頼されるなど、色々な目標を立てると思います。
プク太くん、次の実習の
目標は何にしたの?
今回は、評価を頑張る!
って目標にしたよ。
う~ん…。
患者さんにゴールを設定する際には、この内容では不十分です。もっと具体的な内容と、根拠を示す必要があるんですね。
そこで今日は、実習のレジュメ発表で、フルぼっこされた経験を持つ私が、ゴールの具体的な設定方法について解説したいと思います。
良いゴール設定の条件
ではまず、良いゴールの条件について、確認をしていきましょう。
達成基準がある
1つ目の項目は、ゴールを達成した・できなかった、この基準があるかどうかです。
ちょっと、良い例と悪い例を並べてみます。
目標を立てる人 | 良いゴール | 悪いゴール |
陸上選手 | 自己ベストを 1秒更新させる |
速く走れるよう 努力をする |
スーパーの店長 | 商品廃棄量を 5%削減する |
コスト削減を 頑張る |
理学療法士 | 500m連続歩行 を可能にさせる |
体力の向上 |
2つの決定的な違いは、秒・%・mといった、単位が入っているかどうかです。
このように数値化しておかないと、本当に達成できたの?という部分が曖昧になります。
周囲の人間から文句が出ないように、明確な達成基準を用意しておきましょう。
達成期間がある
2つ目は、達成するまでの期間です。
目標を立てた!と言っても、何十年も先の話をされても困りますよね。
そこでリハビリでは、以下のざっくりとした分類が、一般的に使われています。
Goalの分類 | 期間の目安 |
STG:Short Term Goal ショート・ターム・ゴール |
数日~数週間で 達成できそうなもの |
LTG:Long Term Goal ロング・ターム・ゴール |
1~2ヵ月ほどで 達成できそうなもの |
FG:Final Goal ファイナル・ゴール |
退院をするまでに 達成しておきたいもの |
当然、急性期や回復期など、病院の特色によって、期間の目安は大きく前後します。
Term(ターム)って
どういう意味なの?
日本語で、期間って意味だよ。
たまに、「ターン」と読む人がいます。
意味が全く変わってくるし、聞いていて恥ずかしいので、正しくタームと読みましょう!
進捗状況がある
長距離の移動だと、必ず「どれ位で着く?」って聞く人がいますよね。
ゴール設定も同じで、達成までの期間が長いと、現在の位置が分かりにくくなります。
そのため、現在の進み具合が分かりやすい方が、良いゴールといえますね。
日々、更新されている
実は、ゴール設定は変更が可能です。
初期評価で決定したゴールは、途中で変えずにそのまま…、って考えている人が多いかもしれませんが、それは勘違いです。
ええ、途中で変えていいの?
数ヵ月も先のことなんて、
分かるワケないじゃん!
例えば、1ヵ月で立てるようになる!という目標があった時、患者さんが肺炎で2週間安静にしていたら、もう達成は不可能です。
その場合は、目標を下方修正し、また予定を組み直します。反対に回復が早い場合には、内容を上方修正していきます。
現状に合わせて最新情報に更新しよう!
具体的なゴール設定
架空の症例を用意しましたので、一緒にゴールを設定しながら解説していきます。
【症例A】
転倒による頸部骨折により人工股関節術を施行。Demandは、自分で歩いて退院するということで、本日より歩行訓練開始。
【STG】
平行棒内での自立歩行(1週間以内)
【LTG】
T字杖を使用した100mの独歩獲得
では、いきますか。
STGを達成しよう
まずは、前半のSTGの達成を目指します。
1週間という期間で、平行棒内での歩行自立させるため、以下のように、4つの段階を付けてみました。
段階 | 達成内容 |
1 step | 平行棒を使って 1人で立つことができる |
2 step | 平行棒に掴まりながら 左右に荷重移動ができる |
3 step | 平行棒に掴まりながら 1往復の歩行が可能になる |
STG | 平行棒内であれば 自由に歩くことができる |
最初は平行棒に慣れてもらい、その後、徐々に歩行に繋げていきます。
患者さんも意欲的で、かなり順調!
今週は、あと2日を残した段階で、平行棒内での歩行が可能となっています。
しかし、まだ緊張しており、自由にサクサク歩けるわけではありません。
でも、2日あれば行けるかな?って感じなので、このまま経過を観察します。
なるほど、ゴールにStepを
付けると分かりやすいね。
まぁ期間や進捗状況が、
一目瞭然になるからね。
では、このまま後半戦に進みましょう!
LTGを達成しよう
STG~LTGは、5段階の設定にしました。
平行棒を卒業して、少しずつ独歩に慣れさせる計画になっています。
段階 | 達成内容 |
1 step | 平行棒を片手だけで 歩行が可能になる |
2 step | 平行棒内でT字杖を使い 歩行が可能になる |
3 step | T字杖と軽い介助で 歩行が可能になる |
4 step | T字杖と近位見守りで 50mの歩行が可能になる |
LTG | T字杖を使用して 100mの独歩が可能になる |
退院日が決まっていれば、残りの日数を勘案しながら、プログラムを調整したり、ゴールの内容を変更していきましょう。
細かく設定して、毎日更新する。
これを意識すればいいんだね。
今度の実習でやってみてね!
以上、リハビリの具体的なゴール設定でした。
おわりに
貯金やダイエット…。目標を立てることって、自分のことでも難しいですよね。
それを他人で実践するんですから、最初は上手くできなくて当然です。
まずは良いゴール設定の条件を理解し、焦らずコツコツと経験を積んで行きましょう。
それでは、良いゴールが
立てられますように。