こんにちは、理学療法士で
専門学校教員のダイ吉です!
動作分析の中で、最も新人セラピストを悩ませるのが「寝返り動作」です。
動作が地味で一瞬で終わるため、いったい何を分析すればいいのか分からない…、という人も多いのではないでしょうか。
う~ん、たしかに分からん。
まず、分析ポイントを
理解するといいよ!
ポイントは、身体を回転させる方法です。これさえ理解できれば、寝返り動作なんて簡単に評価できますよ!
また、解説の後に「力試しテスト」を用意していますので、是非チャレンジしてみて下さい。
寝返り動作について
いつ出来るようになるのか
生後間もない赤ちゃんは、自力で寝返りをすることができません。おおよそ、生後半年ほどで獲得すると思われます。
う~ん、う~ん…って頑張っている姿って、とても可愛いですよねw
つい手を出したくなっちゃう。
なぜ出来るようになるのか
成長により必要な筋力が付くこと、頸椎が生理的前弯になること、頸部の立ち直り反応が出現することで、寝返り動作が可能になります。
といっても、主な動きは回転運動です。
だから寝返り動作をするためには、臥位の状態で回転する力を作る必要があるのです。
正常な寝返り動作
姿勢や動作を分析する前に、まずは「正常」について確認しておきます。
正常な寝返りって何だろう?
え、骨盤が回転して…、
体幹回旋が…、う~ん。
動作って色々なパターンがあるから、どれが正常なのか判断が付きませんよね。そこで、私なりに正常な寝返り動作を定義すると、
「全ての環境・条件で寝返りができる」
こうなります。
✔ 右にも左にも寝返れる
✔ 柵が有っても無くても寝返れる
✔ 床でもベッドでも寝返れる
このように、いつでも・どこでも・何回でも、確実に動作が成功することが「正常な動作」の絶対条件なんですね。
この定義は、全ての姿勢と
動作や歩行に当てはまるよ!
寝返り動作のメカニズム
では、寝返り動作の分析ポイントである、回転する力の作り方について、様々なパターンを紹介していきます。
位置エネルギーの活用
寝返り動作は、臥位での運動です。
よって、広い支持基底面と低い重心位置で作られた、「安定」が邪魔をします。
そのため、場合によっては、不安定な姿勢を作る作業が必要になります。
図のように、上肢と下肢の位置が重心よりも高くなることで、位置エネルギーが生じます。
位置エネルギーとは、物体が高い位置にあるだけで、既に生じている力のことで、落下することにより消費します。
後は、その力を寝返りたい方に向けるだけで、重力により身体は回転運動を開始します。
まずこれが1つ目。
分節運動で回転する
物体というのは、固定と運動を入れ替えることで、エネルギーを生み出せます。
分かりやすいのが、ヘビの動きですね。
ヘビが前に進めるのは、このアコーディオン運動により、推進力を作っているからです。
ヘビの気持ち悪い動きにも
ちゃんと意味があるのね。
じゃあ、今度はこの仕組みで
回転する力を作ろうか。
では、まず上半身と下半身に分けて考えていきます。最初の運動は下半身を床に固定して、上半身を回旋させる動きになります。
次は入れ替わりましょう。上半身を床に固定して、下半身を回旋させます。
このように、2回の回旋運動により側臥位になる方法が、2つ目の「分節運動」を利用した寝返り動作になります!
床反力を使った回転運動
続いての力は、「床反力」になります。
床反力とは、床に叩きつけたボールがバウンドするように、押したものがそれと同じ力で反発してくる力になります。
ちょっと動画を観てみましょう。
こちらは、腹臥位からの寝返りです。
肘の伸展で回転してるね。
いや、よく観察してごらん!
ぱっと見、肘の伸展で身体を持ち上げているように観えますが、動画のタイトルにC6と書いてありますよね。
C6だと肘の伸展はできませんので、手掌面を床に固定した状態から、大胸筋の収縮で閉鎖運動連鎖(CKC)を起こしているのでしょう。
お~、本当だ…。
あとその他にも、肘を床に押し付けたり、股関節の伸展で床を蹴るパターンもありますね。
これが3つ目の方法です。
遠心力を使った回転運動
回転する力!と言えば、陸上競技のハンマー投げが思い浮かびます。
先程の、位置エネルギーを使った方法の応用ですので、ちょっと動画で確認しましょうか。
観て頂いたように、遠心力というのは、回転する力に変換するのが簡単です。
頸椎損傷の患者さんのように、十分な回転力が作れない場合の、最後の寝返り方法として覚えておきましょう。
これが4つ目の方法になります。
寝返り動作を分析しよう
それでは、実際の寝返り動作を観察して、回転運動の作り方を分析していきましょうか。
お題の寝返り動作は、概要欄に痙性四肢麻痺の記載があった、この動画にしてみました。
繰り返し再生をしながら、どのような能力で回転する力を作っているか、じっくりと分析してみて下さい。
どうですか?
回転する能力は、分析はできましたか?
ちょっと待ってよ…。
じゃあ、あと1分ね。
それでは、答えを合わせてみましょう!
まずは、両上肢のプッシュアップで、頭部を高い位置に移動させています。
そして、頭部の重さで作られた位置エネルギーを、寝返り側に向けることで、回転する力に変換していますね。
回転スピードがゆっくりなのは、右下肢が邪魔をしていることと、左下肢がカウンターウェイトになっているからでしょうか。
よしっ、だいたい合ってた!
う~ん、本当かよ…。
どうでした、意外と簡単でしたかね。
おわりに
寝返り動作は、重力を敵に回す動作です。
そのためセラピストは、回転力を生み出す方法と、効率の良い回転運動の条件を知っておく必要があります。
最初は難しいと思いますが、関節運動、筋の活動、重力、回転モーメント、床反力など、徐々に運動学の知識を絡めていきましょう。
それでは、寝返り動作分析が
上手にできますように!